岡崎さんの唄――日常。

やっぱり――聴けない、という人が多いのではないかと思います。
歌声。
まだ、辛いですよね。


訃報を聞いた最初の日は、
CDラジカセの電源を入れられませんでした。
信じられない気持ちで、真白になりながら、
ネットの世界を彷徨ってた。
「嘘だ。嘘だ。嘘だ」
って。


―――現実でした。


二日目、電源を入れました。
スイッチを入れるのが正直怖かった。
哀しすぎるんではないかと。


でもなんとなく惹かれるように腕を伸ばしてフッと電源を入れました。
すると。
普通に、岡崎さんの歌声が流れてくるんですよね。
私のCDラジカセは三枚CDが入る場所があるんです。
一箇所は新居昭乃さんの。
もう一箇所は岡崎律子さんの。
それぞれ、大好きな曲を集めてつくったCDをいつも入れてる。
最後の一箇所はその時々で、いろんな人のCDが入ります。


普通に普通に「4月の雪」がかかって、
――ああ、岡崎さんだと思いました。
すごく自然で自分でも驚きました。
毎日聞いてたから、
岡崎さんの歌があることがもう日常になっちゃってるんですよね。


でも、未来を唄って背中を押してくれる
「Good Luck!」が流れてきた時はすごく辛くなりました。
これを初めて聴いた時、進路ですごく悩んでたんです。
そんな時に、ものすごく胸にしみこんできました。
挫折しかけてたから、「誰にでも”輝ける場所”があるんだよ」
って唄ってくれた岡崎さんはとてもとてもありがたかった。
「うっしゃー、そこ目指して、私も頑張るぞー!」
そんな気持ちにさせてくれました。
それ以来大好きな曲のひとつで。
――だから、岡崎さんの未来は…もう…と思うと
とてもとても辛かった。


forフルーツバスケット
は岡崎さんとの出会いの歌です。
偶然、TVで耳にして、何日も気になって、
結局CD屋さんに買いに走ったんでした。
そのCDには、「セレナーデ」「空色」「愛すべき明日」
と、今でも大好きな歌が収録されていました。
ちょうど、その時も、いろいろくじけそうな時期だったから
とてもとても胸にしみました。
――ああ、こんな風に世界を優しく唄う人がいるのだなあと。
こんな風にきれいな心で自分もいられたらいいなと。


そこから、ちょっとずつちょっとずつ、
CDを集めました。
そして、新曲を楽しみにして。
――これからも、
ずっとそんな毎日が続いていくんだろうと勝手に思ってた。


――「当たり前」は「当たり前」じゃないんですよね。
こんなことがある度に気づかされる。
普通の日常って、当たり前じゃなくて
とてもとても幸せなことなんですよね。


今も岡崎さんの歌をかけながら、これを書いています。
これが、私の日常なんだと思う。
これからも、岡崎さんの歌は私にとってとてもとても大事なもので
あり続けるんだと思う。


今はまだ哀しいけれど、
岡崎律子という人に出会えたという
そのことに最大級の感謝をしたい。